2018年 02月 25日
サザンカは咲いた * Passion. Connected.
サザンカとはなびら餅、散華(2017年1月)
羽生弓弦選手(2010年NHK杯)(映像はすべてTV録画を撮影)
2010年、ラズベリーケーキめいた装いでシニアデビューした少年がいました。15才の羽生弓弦選手です。軽やかに4回転を跳び、プルシェンコ選手のように男子ながらビールマンスピンを!まだまだスタミナが足りなくて、氷上でパタンと倒れたり…
8年後、彼はりりしい若武者となり、オリンピックで2度目の金メダルを勝ち取りました。フリーの後半、「羽生の体力は大丈夫か」という解説者の声に、かつてハラハラしながら見つめていた少年の面影が甦り、涙がこぼれました。
Here is fifteen-year-old Yuzuru HANYU in his senior debut match in 2010. His supple body could show us not only a quadruple jump but also Biellmann spin(like Plushenko). At the same time, his lack of stamina sometimes made him flop down while skating.
After eight years, he became a young warrior and won his second gold medal of the winter Olympics. At the beginning of the second half of his free skating, the commentator's voice " Hanyu's stamina is OK? " reminded me of that fifteen-year-old boy and my tears fell in drops.
今季のフリーに選んだ演目は「SEIMEI(晴明)」。モデルは夢枕獏原作の映画『陰陽師』です。陰陽道とは、古代中国の陰陽五行説を起源として日本で発展した呪術・占術の体系です。この謎めいた指の形には陰陽師、安倍晴明の気がこめられています。
His free skating SEIMEI is based on the film Onmyo-ji (whose original is YUMEMAKURA Baku's novel Onmyo-ji ). Seimei is the name of an excellent Onmyo-ji in the Heian period. Their mysterious finger gesture expresses this shaman's concentration power.
映画「陰陽師」で安倍晴明を演じる野村萬斎(2001年)*Onmyoji (film)*NOMURA Mansai
羽生選手は2015年に晴明を演じた時、狂言師の野村萬斎(映画の主役)と対談しています。
HANYU Yuzuru talked with NOMURA Mansai in 2015 when he had played SEIMEI. Mansai is a Kyogen performer, actor, director, etc.
萬斎サマによれば、映画の舞いは即興だったとか。能や狂言の型を用いつつ、型にはまらない形も交えて、「フリー」で舞ったと…初めのポーズでは、袖を美しく負うために袖口を握っています。
Mansai said that his dance in the film was an improvisation(free dancing!). He holds a cuff in the beginning pose.
羽生選手は筒袖なので、袖口を握ることはありません。萬斎サマの言葉をヒントに、羽生選手は左手で天を仰ぎ、「天地人」の気をこめることにしました。
後姿の写真は2015年のNHK杯のものです。オリンピックのと見比べると、衣裳の刺繍が違いますね!(背中には金の星もありません)細かいデザインだけでなく、重さも変わったそうです。新しい方がずっと軽いのだとか。
Yuzuru does not hold the cuff of his tight sleeve but points the sky symbolizing the idea of "heaven, earth and man" that had been suggested by Mansai in their conversation.
(NHK Trophy in 2015 ★ without star embroidery in his back)
平安貴族の狩衣をアレンジしたこの衣裳、白、紫、水色の色調は映画と共通しています。スケートリンクとも保護色?
SEIMEI 's costume is an arrangement of the noble's robe in the Heian period. Its cool colours (white, purple, and pale blue) are common with those of Seimei in the film. (ex. their sleeves) Is he protectively colored in this ice arena?
あ、紫の指貫(ズボン)の前に、お皿に盛った蘇(古代のチーズ)が!(ancient cheese) ↑
気迫のこもった振付けにも、つい萬斎サマと通じるところを探したくなってしまいます。二人ともジャンプ力には定評がありますし…(野村萬斎の三番叟は凄いらしい)
They are both powerful jumpers and passionate dancers.
この技の名はランジ(lunge)?↑
舞楽のような足さばき*Mansai's original dance like Bugaku (court music)
柔らかな体を生かしたイナバウアー、今季も見せてくれました。ステップではパッション(激情)が炸裂します。
His passionate Ina Bauer and step sequence !
つねにクールな安倍晴明が一度だけ激情を見せたのが、友を失う場面でした。この後、晴明は友に命を吹きこむために舞います。幻に友の奏でる笛の音に合わせて…晴明の舞いは、魂を取り返すための舞いだったのです。
Seimei, who is always cool, has given vent to his passion only once when he lost his friend. He danced in order to breathe the life into his deceased's body to the illusion of the firend's flute. Seimei's dance was to regain the soul of the dead.
袖かへし かへらぬ人の かへるなら 今こそ舞はめ 魂かへす舞ひ
笛の音がやみ、羽生選手のエッジが止まりました。歓呼。背中に輝くのは星形の晴明紋。この五芒星は五輪のコスチュームにしか見られません。星の力も彼の背中を押してくれたでしょうか。
東日本大震災で多くの命が失われたのは、snowdropが大切な人の喪の哀しみから何年も抜けられずにいた頃でした。羽生選手が舞った「花は咲く」…彼のスケートに励まされた日本人の魂が、平昌でふたたび彼の背中を押したのでしょう。
The flute ended and Yuzuru's edges stopped. APPLAUSE. A gold pentagram was shining on his back. It is the symbol mark of Seimei, whose power might have encouraged the skater.
He had often skated "FLOWERS WILL BLOOM~Hana wa Saku~" since the Great East Japan Earthquake. His skating encouraged Japanese people including snowdrop who had already been in mourning-depression for years. Our gratitude to him must have encourged him again in PyeongChang.
右足にお礼を言う羽生選手*Yuzuru expressing his gratitude to his right leg
順風満帆なら金メダルは取れなかった、と語る羽生選手。氷の上に立てない時間は座学やイメージトレーニングに費やされました。おそらくは陰陽師のイメージもより鮮明に…オリンピックで羽ばたいたのは、これまでの晴明をさらに深めた、羽生選手オリジナルの晴明だったはずです。
余談ながら、「陰陽師」という単語は昨年の翻訳の仕事にも出てきました。どう英訳すべきか悩んだことを思い出します。^^
Yuzuru said "If it had all been smooth sailing I would not have been able to win the gold medal." He spent the days image-training and reading when he could not skate. His image of Onmyo-ji became clearer, deeper, and more original.
”From Heaven the deceased should see this festival on Earth."
declaring that makes that the truth
★Notte Stellata★
(pinterest)
魔物退散!★Demons driven away!
五輪の六花*five-ring of six petaled flowers
五輪の蝶々*宮原知子選手(google search)
Flight of the Butterfly*MIYAHARA Satoko
a butterfly
that injured
in her wing
has trained diligently
to overwhelm the demons
(All Rights Reserved)
フランスの選手も頑張っていて、全体的にも楽しいオリンピックに思えました。
この羽生選手と野村萬斎の対談、私もyoutubeで見ました。(*‘∀‘)
どちらもプロだなと感じる対談ですよね。
野村萬斎は、私の弟と同い年なのですが、久しぶりに話している姿を見て、発声の仕方等、大人だな~、さすが狂言師だななんて妙に感心してしまいました。
同世代がこうやって活躍しているというのは嬉しいことですね。
この袖口があるからこその動きの説明など、これも至極納得できる説明でした。
狂言も興味深いですね。
狂言でなくとも、ひとうひとつの所作の意味もいろいろ研究したら面白いだろうな。
羽生くんは、本人も言っていたように、ほんとに怪我した足が頑張ってくれましたね。
思わず私も自分の膝に「君もがんばれ!」と声をかけてしまいました。
「陰陽師」、訳をするのは至難の業でしょう??!
一般的な文でも訳というのは、ほんとに奥が深くて難しい。
そして訳す人の感性が現れるから、原文とはまた別の訳した人の作品というものができあがりますね。^^
萬斎サマ… snowdropさん、ファンなんですね♪
たとえばフィギュアのメイテ選手、記憶のなかのボナリー選手と見比べて応援しました♪
野村萬斎、見るたびに年輪を重ね、渋く深みを増しています。snowdropもがんばらないと…
echaloteさんはいつもマイペースでよく頑張っておられますね。グルコサミンなんかどうでしょう?
二人の対談、ネット上で見られたのですね!よかったです。^^
陰陽師の訳語、もっと意を尽くしたかったのですが、文脈上スペースが限られていて…
このブログでちょっと埋め合わせできた気分です。
萬斎サマ、朝ドラ「あぐり」に出ていた1997年から憧れです♡ クロサワの映画「乱」も後から見ました。
オリンピック閉会式、満を持してテレビをつけたら途中でした!1時間勘違いしていたのです。
いつもながら、おっちょこちょいですね~(T◇T)
素晴らしい解説 ありがとうございます。
写真と言葉 なるほど、と一枚一枚 納得しながら拝見しました。
羽生選手のフィギュアをこれからは もっと奥深く見ていけそうな気がしました。いつも素晴らしい視点で おしえてくださってありがとうございます。
五輪のおかげで、素晴らしい時間をpikoさんをはじめ世界中の人たちと共有できました。
閉会式もぶじに終わってよかったですね(前半は録画で見ました。^^)。
フィギュアスケートの技術面はよく分からないのですが
羽生選手と野村萬斎の奥ゆきのある素晴らしい演技のおかげで、
私なりに考えを深められた気がします。
一緒に楽しんでくださってありがとうございました。
今朝、あの物語を思い出しながら目を覚ましたんです。
そしたら、昨夜コメントをくださっていたのですね!ありがとうございます。
同じころに同じように大切な人を見おくったのですね。
おたがい何とか歩んできたおかげで、めぐりあえましたね。
写真を撮ったり、詩歌をつくったり、本や言葉を教え合ったり…
「いのちなりけり」ということば通り、生きていればこそ、ですね。
キリスト教、私にも分からないことがたくさんあって…
病床洗礼に立ち合って教えられましたが、必要なのは、キリストの復活を信じること、それだけなんです。
銀河の拙歌、意味が伝わりにくいのでは、と危ぶみながらも追記したんです。
鍵コメさんには分かって頂けたのですね!嬉しい驚きです。
迷っておられるなら、このままにしましょうか。
少し踏み込んだリコメにさせて頂きましたが、何かお気づきの点があったら仰ってくださいね。
さすがに今回の羽生結弦の演技は食い入るようにして見つめました。
キレの良さ、なめらかさ、スケールの大きさ、どの点を取っても素晴らしく、美しかったです。
「陰陽師」の映画、2作とも見ましたが、作品自体はつまらなくて、
ただただ野村萬斎の体の動きが美しくて見惚れたものです。
こうして二人の写真を並べてくださったのを鑑賞すると、
改めて惚れ惚れしてしまいました。
どこの国だか知らないのですが、女子のフィギュアスケートで金メダルを取った15歳の選手もすごかったですね!
私が見たのはエキシビジョンなのですが、衣装も振付もめちゃくちゃ色っぽくてびっくり。
日本人が15歳の女子選手に求めるのは可愛らしさや清楚さでしょうが、
国によって違うんですねえ。
文化の違いがわかって、興味深かったです。
萬斎さんが羽生くんが陰陽師を演じる時のために、私はよくわからないのですが、お能?の「天地人」の印を結ぶところを教えていらしたときに、羽生くんがとても感心したように聞いていたように思えて、素直さがとてもいいなと思ったのを思いましました。
本望だったでしょうね。
2001年の陰陽師のお写真の野村萬斎さん、まだお若くて凛々しいお顔をされていますね。
光源氏でもされたらよかったのに。。。とか思ってしまいました。
羽生選手のSEIMEI、和の味わいたっぷりでしたね。
映画「陰陽師」の萬斎、舞いも所作も美しく、写真が撮り易かったです。
いっぽう、アクション系の真田広之、善玉も悪玉もこなせる役者さんだなーといつも思います。
ロシアのザギトワ選手、エキシビジョンの妖艶な虎が印象的でしたね!
フリーの「ドン・キホーテ」はバレエ同様はっきりした振付で、若々しかったですが
銀メダルのメドベージェワ選手の「アンナ・カレーニナ」のほうが感情豊かでした。
15才と言えば、ソチ五輪でキャンドルスピンが話題になったリプニツカヤ選手、
初々しい憂いに満ちた「シンドラーのリスト」が忘れられません。
日本女子、とくに若手は清楚な選手が多いですね。デビュー戦などでは、成人式のピンクの振袖を思わせる可憐なプログラムをよく見ます。
そういえば、純和製ペアがなかなか育たないのは、若い男女間の恥じらいが他国より大きいせいもあるのでしょうか。
あの対談をお母様とご覧になっていたのですね!
私もこの記事を書く時に、改めて録画を見ました。
「天地人」、私もよく分かりませんが、宇宙の万物をあらわすようですね。生け花でも聞いたことがあります。
対談でインスパイアされた羽生君が「俺、すごい所まで来てるな」と感無量になっていたのが印象的です。
いっぽう、60代の先輩は、萬斎さんの懐の深い受け答えに感心していました。
お二人それぞれの超一流の創造の世界…まさに「高みで見える景色」もあることでしょう!
萬斎さん、清々しい青年が年々渋くなって…晩年の光源氏を演じるところを見てみたいです。