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晩秋の展覧会 * salon de peinture au fin de l' automne

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マグリットの絵と、庭の柿もみじで遊んでみたら…(2016年)




ゆつくりとやまとの丘に冬は来て白楊(ぽぷら)もみぢをさらさら鳴らす


lentement  
l’ hiver est venu 

sur une colline en Nara

et fait murmurer   
les cheveux des peupliers



ヒヨドリも渡り鳥になることがあるとか(11月7日撮影)
The brown-eared bulbul sometimes becomes a migratory.


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 2017年の立冬は11月7日から21日まで。もっとも、奈良では「きっぱりと冬は来た」(高村光太郎)ことがありません。ここ数日冷えこみますが、また小春日がおとずれることでしょう。
 今年も、高村光太郎とパステルナークを読み返したくなりました。ロシア語は忘れかけていますが、二つの詩に共通する音を味わいたくて…。光太郎の「ざくざくと」、パステルナークの「ザールィ(大広間)」。ともに、降り積もった落ち葉を踏むときの豊かな響きを伝えています。
 下の方にロシア語の動画を貼りつけました()。ここからは、2015年10月の記事です。もしもお時間が許すなら…

In the lunar calendar, the winter comes from November 7th to 21th. In Nara, we sometimes enjoy Indian summer until December.
I would like to appose two poems on autumnal leaves this year again: Takamura Kotaro’s and Boris Pasternak’s. Although I am not good at Russian, I dare to quote the original texts. It is because I want to compare the similar sounds in these two poems: Kotaro’ s “zakuzaku-to” and Pasternak’ s “залы” [zalu/i], both of them convey us the rich sounds when we crunch through the carpet of fallen leaves, don't they ? ()


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落葉を浴びて立つ 高村光太郎

(…)
手ざはり荒い無器用な太い幹が、
いつの間にかすんなり腕をのばして、
俵屋好みのゆるい曲線に千万の枝を咲かせ、
微妙な網を天上にかけ渡す
(…)
桜林の昼のテムポは、
うらうらとして移るともないが、
暗く又あかるい梢から絶え間もなく、
小さな手を離しては、
ばらばらと落ち来る金の葉や瑪瑙の葉。
どんな狸毛でかいた密画の葉も、
天然の心ゆたかな無造作さに、
散るよ、落ちるよ、雨と降るよ。
林いちめん、
ざくざくとつもるよ。
(…)
落葉よ、落葉よ、落葉よ、
私の心に時じくも降りつもる数かぎりない金いろの落葉よ、
散れよ、落ちよ、雨と降れよ、
魂の森林にあつく敷かれ、
ふくよかに積みくさり、
やがてしつとりやはらかい腐葉土となつて私の心をあたためてくれ。
光明は天から来る、
お前はたのしく土にかへるか。
(…)ああ、私はまだかへれない。
前も、うしろも、上も、下も、
こんな落葉のもてなしではないか、
日の微笑ではないか、
実に日本の秋ではないか。
私はもう少しこの天然のふところに落ち込んで、
雀をまねるあの百舌のおしやべりを聞きながら、
心に豊穣な麻酔を取らう、
有りあまるものの美に埋れやう。


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Standing in the shower of fallen leaves TAKAMURA Kotaro

(…)
In the rich nonchalance of the Nature,
scattering, falling, showering,
All over the forest,
Accumulate crunching.
(…)
Fallen leaves, fallen leaves, fallen leaves!
Countless golden leaves piling up in my soul without choosing the time !
Scatter, fall, shower !
Accumulate in the forest of the soul,
Rot to soft humus and warm my heart !
The light comes from the heaven,
Will you return to the soil agreeably ?
()
Oh, I cannot return yet,
Because anywhere and everywhere
Such a greeting of fallen leaves !
Such a smile of the sun !
This is the very autumn in Japan !
I will sink into the Nature' s bosom a little longer,
while listening to shrikes imitating sparrows' chirping,
put my soul under rich anaesthezia,
bury myself under the beautiful overabundance.

(translation of snowdrop, 2015)




* 和訳は下の額絵の先にあります

Золотая осень
  Борис Пастернак


Как на выставке картин:
Залы, залы, залы, залы
Вязов, ясеней, осин
В позолоте небывалой.

Погребенная земля
Под листвой в канавах, ямах.
В желтых кленах флигеля,
Словно в золоченых рамах.


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ポレーノフ「アブラムツェボの秋」*
Autumn in Abramtsevo Vasily Polenov (1890) google search


黄金秋 パステルナーク  工藤正廣 訳

秋は 誰にでも開かれ見渡せる
おとぎばなしのやうな宮殿
みづうみたちに見惚れた
林道の伐開帯

展覧会場にゐるやうだ
未曾有の金鍍金(きんめっき)をした
ニレ トネリコ ヤマナラシたちの
大広間 大広間 大広間

菩提樹の黄金の環飾りは―
花嫁のかんむりのやうだ
白樺の面差しは―
婚礼の透かしヴェールをつけてゐる

側溝や窪地で
落ち葉におおはれ埋葬された大地
宮殿の翼屋(はなれ)は黄色いカエデたちにかこまれ
さながら金色の額縁に入つたかのやうだ
(…)
秋は 古い書物や 衣装や武器の
古代(いにしへ)の一室
ここでは厳しい寒さが
財宝のカタログの頁をめくつてゐる


L' automne d' or Boris Pasternak

Fabuleux palais d'automne
Ouvert à tous les curieux,

Percées des voies forestières

Que fascinent les lacs bleus.


Salon
de peinture où s'ornent

De dorures inouïes

Le tremble, le frêne et l'orme

Tout au long des galeries.


Le tilleul sous son bandeau

D'or, pareil à l'épousée

Et la face du bouleau

Sous son voile d'hyménée.


Terre au creux des caniveaux

Enterrée sous le feuillage,

Ailes de maisons, tableaux

Qu'encadre l'or des érables.

Automne. Antique recoin :

Armes, vieux bouquins, toilettes,

Catalogue de trésors

Que les premiers froids feuillettent.

Traduction sous la direction d'Hélène Henry
Gallimard


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(2017年の桜もみじ)

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「エフゲニア・メドベージェワ」の画像検索結果

メドベージェワの「アンナ・カレーニナ」
Bonus*Анна Каренина (NHK*11,11)
Евгения Медведева(google search)





Commented by 1go1ex at 2017-11-21 21:58
高村光太郎の詩は昔、よく読んだものですが、
久しぶりにここに紹介してくださっている詩を読むと、
なぜかナルシズムを感じてしまいました。
パステルナークの訳詞は今ひとつ、体に入ってきません。
鈍いだけなのかも…。
上から4番目の落ち葉の写真をこの上なく美しいと感じます。
Commented by snowdrop-uta at 2017-11-22 20:32
*1go1exさん
楓ではなく桜もみじというのが光太郎らしく、新しい明朗な美しさですね。
光太郎気分で撮った落葉の写真、お気に召して嬉しいです。

むかし好きだった詩人を読み返すと、若かった頃と全然印象が変わることも…
光太郎自身も、この詩を書いたころ若く、ナルシズムと不安と野心に満ちていた気がします。そして大正の頃の日本も…

パステルナーク、それこそ大正の日本人のようにロシアへの憧れがないと、入りにくいかもしれません。
Commented at 2017-11-22 23:35
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by snowdrop-uta at 2017-11-23 06:07
*小雪(しょうせつ)の日の鍵コメさま
お越しくださりありがとうございます。
ああ、そうですね!
だから、黄金の雨がふるようなこの詩に惹かれるのかもしれません!
時雨は柿の葉を彩るすぐれた織り手でしょうか。
Commented by milletti_naoko at 2017-11-25 01:19
さすが彫刻家、高村光太郎の黄葉や落ち葉、木の描写には、他の作家や詩人にはない、独特の視点や表現がある気がします。いい詩ですね。どの写真も秋の詩も風情に満ちていて、秋をより豊かに楽しめそうです。
Commented by snowdrop-uta at 2017-11-25 20:44
*milletti_naokoさん
コメントをありがとうございます。
光太郎の彫刻家ならではの視点、意識してこの詩を読み返すと、新たな発見がありました。桜木の樹皮や粘土の手触り、腐植土の匂い…
一緒にご覧いただけてよかったです。
そちらは、こちらより少し早めに黄葉が進んでいるようですね。お体の節々を冷やさないようご自愛ください。

by snowdrop-uta | 2017-11-21 20:24 | 美術に寄す(fine art) | Comments(6)

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